リネンコ日誌(4)当日ワンオペ問題
本当に一人で出るつもりなんですよ、本当に。
Pleasantly surprised that some of my friends showed interest in my newsletter and even subscribed to it. I'm so grateful to have you all here, but as you see, it's totally Japanese-based. I tried applying machine translations to my previous posts; the quality was so-so in English, and I have no idea in Spanish and Korean. Please feel free to unsubscribe at any time, with no pressure, and stay in touch through Instagram and Bluesky as well.
2025-09-08
来年度からエッセイの新連載が決まった。はりきって企画書を送ったものの長らく音信不通で、諦めかけていたのだが、無事に実現するらしい。嬉しい。さっそく仕込みにかかるとして、この報せを受けて、やはりInstagramアカウントは再開させなければならないな、と考えている。一度は「やめる」と決めたわけで、苦渋の決断を覆すのもまた苦渋ではあるが、来年度以降の状況を鑑みると、Instagramだけは手放さずに継続すべきだなぁ、とぐずぐず考えている。
Metaに買収される以前のInstagramはとてもよいSNSだった。あれに代わるものはまだこの世にない。現在はFlashes for Blueskyというサービスを使っているけれど、どうにも盛り上がりに欠け、私だって更新をサボッて離脱気味である。一方で、劣化する広告とThreadsにさえ目を瞑れば、Instagramには昔ながらのユーザも多く残っているし、新規フォロワーが増えるさまにも「理に適う」手応えがある(X/Twitterやfacebookにはもはやそんな道理すらも無い)。ザッカーバーグに利するのは癪だが、上手い落としどころを探りたい。
実際の市場の中心はすでにTikTokに移ったりしているのだろうが、言い方を変えれば、「Instagramのエンゲージメントさえ確保されていれば、下手にTikTokやYouTubeに手を出したり、新規にポートフォリオサイトを作ったりせずに済む」のも強みと言える。「私はね、SNSとは適切な距離を置いている、旧い人間なんですよ」と示すにしたって、静的なInstagramのアカウントを活用し、クラシックな使い方を続けたほうが、よっぽどいいようなのだった。
2025-09-10
Blueskyで「同人活動ができる人はマルチタスク型である」という意味の投稿がバズッていた。私は典型的なマルチタスク不全の人間なので、すでにしてつらい。
「あなたみたいな何でもできる人は全部自分でやったほうがラクなんじゃないの〜?」→(間)→「どうしてこんな簡単な誰にでもできるようなこともできてないの!?!?」のコンボで他者からの信用信頼を失って苦しみ続ける人生であった。できることだけを、マルチタスクっぽく見せかけたシングルタスクの連続として、一つ一つ片付けていきたい。
目玉の新刊を早々に入稿するのだって、この日誌をつけはじめたのだって、「直前2週間で全部が準備できるわけがない」という自分への圧倒的信頼ゆえである。自分ほど信じられんものが他にあるか。すべて苦手意識を少しでも薄めるためにやっている。
*
最近の抱え込みは、売り子の不在。「当日の売り子を手配したいが、売り子を手配するということは、それを依頼する相手方のヒトと密に連絡をやりとりして、イベントに不慣れな相手ならマニュアル渡してスタッフ教育を施すということなので、そんなタスクを増やすくらいなら、全部一人でやるほうがマシ」に至っている。一声かけて泣きつくだけで頼れそうな東京在住の知人たちは、みんな当日同じ文学フリマに出るか、あるいは翌日のコミティアに出ているのでね……。
即売会における売り子の仕事とは、不特定多数に「どうぞお気軽にご覧になってってください」と声掛けなどしつつ、「あなたが作者さんですか?」「いいえ、作者は隣の者です。どうぞゆっくりお話しください」とすべての社交接客スマイル業務を作者に丸投げする隙に、釣り札の種類と向きを揃えたり、卓上に置いた液体がこぼれないよう蓋を閉め直したり在庫を数え直したり、ゴミを小さくまとめていつでも捨てに行けるようにしたり、食事の買い出しとトイレ休憩をいつ取ったり取らせたりするか決めつつ、「××さんのブースまでご挨拶行くなら今ですよ、サッと行ってきて」と店主を動かしたりするようなことだ。
私は「雇われの無責任な立場で」×「マスターが次に何するかまで全部を仕切る」といった掛け合わせは得意なので、お屋敷のご主人様よりメイド長に向いているのと同じように、出店主よりも売り子のほうがずっと向いている。「主」でなく「従」の立場での意思決定には迷いがなく、他人の引っ越しの手伝い、スナックのチーママ、青果の試食販売などにも適性がある。自分が施主になって家を建てられる気はしないが、他人のお屋敷のハウスキーピングは得意で、他人の書いた原稿や他人が散らかしたワイヤーフレームの整理整頓も得意なので、サラリーマン編集者や時間契約のデザイナーにも向いている。「汚部屋に住んでる掃除代行のプロ」みたいな人生である。
ご主人様に向いた人とは、中小企業経営者などのこと。社交性や事務能力に乏しい芸術家気質の人がマスターになるなら、秘書や助手を雇ってその欠けを補う必要がある。しかし誰かを雇うとなれば、今度はその管理能力も求められる。そんな能力があれば、私だって融資を受け不動産契約を結んでショップを黒字化させるような本物の実店舗の「店主」に成っている。我ながら、即売会がギリギリの限界だと思う。「自分が店主の間は自分が売り子になれず、売り子の間は店主になれない」と「自分が筆者の間は自分が編集者になれず、編集者の間は筆者になれない」とは同じマルチタスク不全である。その上で、さらに細かく見ていけば、出店主も売り子も筆者も編集者も貴族も使用人も、みんなマルチタスク業務である。つらい。
*
おりしも、文学フリマ東京事務局から「サイン会等を実施される方へ」というメールが届いた。「ブースへの訪問者増が予想される出店者は、待ち行列をさばくため、事前申請して実行委員会の協力を仰ぐこと」といった内容だ。読みながら、当店の対応を考えていた。
おまえの店にそんな大層な待機列なんかできるわけないだろ、と冷笑も起こるかもしれないが、甘いな……。私は過去に書店店頭などでサイン会や握手会を切り盛りした経験がある。スターにファンが殺到する現場で、売り子やハガシや警備係として働いた経験もある。対象個人たる「ご主人様」(=私)の知名度や人気や人望には関係無く、すべての対面接触交流には事前の設営準備が必須だと、「メイド長」(=私)はよく知っている。
「行けば作者本人に直接会えると考え、おしゃべりするのが目的で、ブースに来る」訪問者は、止めても止めても続々と現れる。ヤベエ奴はどこにでも湧く。見知らぬ不審者以上に難しいのは「非ヲタの知人」である。仕事で付き合いのある相手やオフ会で知り合ったフォロワーなど、「同人誌即売会って初めて来ました〜」みたいな客の非常識を食らうと、ワンオペ出店者はひとたまりもない。テンパった状態で「早く帰れよ」などと口走るとその後の人間関係にもヒビが入る。未然に防ぐ工夫が要る。
そこで、今回の「文学フリマ東京41」では、作品販売のみを行うことに決めた。人員不足のため、会計業務と接客サービスの両立は困難と判断した。事務局へのサイン会等の事前申請は行わず、要申請の行為は一律禁止とする。万が一、人だかりが発生した場合は、訪問者に解散を促すとともにスタッフに通達し、トラブルとして対処する。「誰が来ても丁寧に親切に個別にじっくりサービスいたします」が不可能な以上、「度過ぎた迷惑客は通報します」こそが、すべてのお客様に向けた公平性の担保と考える。
とはいえ、ただ機械的に商品を受け渡すだけというのも、味気ないし、淋しいよね……と、こんなときこそ「カネで解決」だ!! 会場ガイドラインによれば、当日15時以降はサイン会等の開催も認められているので、「ニュースレター年額プラン(50ドル)を購読した人にだけ」「当日15時以降なら」「対面接触交流のリクエストに個別対応する」こととする。このあたり、看板にまとめて掲出しておこう。
本日の出店では、作品販売のみを行います
現金決済のみ、領収書の発行はできません長時間にわたる店頭への滞留はお控えください
行列が生じた場合、再訪をお願いすることがあります以下の行為は、ニュースレター有料会員特典です
・サイン ・握手 ・記念撮影 ・取材や質疑応答
・その他、店主による長時間対応を要するもの特典ご希望の方は下記より新規ご登録のうえ、
注意事項を読み、15:00以降に改めてお越しください
[QRコード]ひとさまの顔を覚えるのが大の苦手です!
知り合いでもハッキリ名乗ってくださると助かります面識無い方からの飲食物の差し入れはお断りします
くらいかな、文案。「ちょっとでも話しかけたら罰金50ドル徴収すっぞ」だと大層ヤな感じがするけど、「有料会員になれば特典として他の客より長めに交流できますよ」だったら、そう悪くない。ペイウォールを設ければ希望者が殺到することはまず無いし、こちらも全員の連絡先を握って照会できるからさばきやすく、「続きは後日改めて」などと切り上げやすい。当日の運営方針を外堀からかためられてよかった。
2025-09-14
久しぶりにInstagramを更新したら、英語圏とスペイン語圏と韓国語圏からニュースレターの新規フォロワーが増えていた。どれも一人ずつなので、全体からみれば小さい数だが、ありがたくも申し訳ない。というわけで冒頭に英文を掲出しておく。
そういえば、今週末はMoMA PS1で NY ART BOOK FAIR 2025 が開催されている。これがだいたい我が街の文学フリマみたいなものなので(ずいぶん雑な説明だな)、ぐるっと回ってZINEたくさん買い集めて英気鋭気を養うぞ〜、と思っていたのだが、合気道の朝稽古行っただけで体力尽きて午後までバテてしまい、敢えなく断念。誘われていた Julian Magazine のローンチパーティも行きそびれた。10月は海外旅行の予定もあって、11月には東京、だんだん地に足がつかなくなっていく秋である。
これはなかなか表現が難しいのだけど、NYABFにせよ文学フリマにせよ他のイベントにせよ、お客さんとしての「一般参加」って、出展者としての「サークル参加」と同じかそれ以上に疲れるものだよね。10代20代の頃ならいざしらず、加齢とともにだんだんその体力が削げているのを感じる。一つ前の日記では場内禁止事項の文案なんか練ってみたものの、基本「当日その場に来てくれるだけで有難い」という感謝の気持ちは忘れずにいたい。あと、当日になってバテてやっぱり来られない、といった事情にも寛容でありたい。自分自身がそうだからです。委託販売や通販についても手厚くしていければと思う。
隣接配置の締切を過ぎてから、一緒に仕事したこともあるような、私より著名な友人知人が誰も彼もみんな文学フリマに出店予定だということを知る。なんだよー、教えてくれよー。もっとずっと積極的に声かけて隣同士にしてもらえばよかったな、と反省しつつ、つまり、同じようにSNSを使っているはずの彼らの側からもまだ私の出店情報は「見えていない」状態なわけで、もうちょっと告知を張り切らないといけないね。中身がないのに空回りもよくないけど。
ニュースレター配信、なんとなく週刊ペースでここまで来たけれども、お知らせするほどのことがなかったら更新が止まると思います。新刊原稿、せめてもうちょっと形になるといいのだが! 今週はここまで。


