リネンコ日誌(14)本屋B&Bと大日記時代
文フリ新刊、書店での販売が始まりました。
まずは告知です。昨日11月30日より、東京下北沢「本屋B&B」店頭にて、先の11/23文学フリマ新刊をお求めいただけるようになりました。B&B限定のサイン本スペシャル仕様です。見本もあるので、気兼ねなくゆっくり立ち読みしていただけますよ。現状、お店入ってすぐのところに平積みです!
『そのかねを』(著者サイン入り、説明書き・折本・特典ステッカー封入)
https://bookandbeer.theshop.jp/items/127121192『紙日記』(著者サイン入り、説明書き・折本・特典ステッカー封入)
無料配布の折本については前述の通りアホほど余ってしまったため、遠慮なく大量に置かせてもらいました。どうぞご自由にお持ち帰りください。マジで頼む。人助けだと思って。なくなったらまた補充に行くから。
いずれ本屋B&Bのオンラインショップにも並ぶのかもしれないが、その頃までには自家通販のご案内もしたいので、遠方在住の方たちはお好きなほうでお求めください。他の本と併せてまとめ買いしたい人にとっては、本屋さん購入も便利でいいですよね。ゆくゆくはリトルプレスを扱う他の書店にも置いてもらえるといいなと思っています。
※書店様とのお取引は原則「買切のみ、返品不可」でお受けしております。掛け率や搬入手段、ノベルティ等については個別にお問い合わせください。
2025-11-24
SNSで「文学フリマ東京41」の総括を眺める。東京ビッグサイトの南棟4ホールを占拠、来場者数は過去最高となる18971人 (出店者5463人・一般来場者13508人)を記録した、というのが公式情報。続けて、「規模が拡大しすぎて昔の良さが失われた」「プロの商業作家はもう来ないでほしい」「新しい読み手との出会いが阻害されている」「場内アナウンスの内容が押しつけがましくてイヤだった」などなど、バズりやすくて目立つネガティブな感想が流れてくる。
公式運営にぶつくさ文句言いながら内輪で仲良く是非を議論できるのもまた、カネ払った参加者ならではの特権のようなもの、オタクが大好きなやつ、おうちに帰って愚痴るまでが遠足である。とはいえ読んでいてあまり良い気分にはならない。味や接客をボロクソに腐しながらカウンターにぐだぐだ居座る常連客とか、メジャーデビュー直後の凱旋ライブハウス公演で後方腕組み彼氏ヅラをキメる古参オタクとか、よそから初めて来た観光客にしつこく絡んで昔語りを始める地縛霊じみた現地住民とか、ああはなりたくねえなって既視感がよみがえる。
つねに新陳代謝を続け、未完成の不定形をヨシとする、静かで、豊かで、自由で、救われるような、同人誌即売会ならではのあの名状し難いフラットでインディペンデントな雰囲気を、わざわざルサンチマンまみれの駄サイクルに引きずり込んで澱ませてる最大の害悪は、おまえらのほうだろうがよ……くらいは言い返したくなる。久々の出店キメてハイになっているから。
私は自分のことを「ポッと出の売れてないプロ」よりは「ベテランでちょっと名の知れたアマ」だと思っている。同時に両方であるにせよ、自負は後者のほうにある。独力で本が出せる理由は「中学から部活でやってた基礎がある」に過ぎず、スポーツや楽器演奏が得意で趣味にしている人たちの出自とそう変わらない。そんなわけで、今になって傷つきやすい下世代から「プロは来んな」と石を投げられたところで、「界隈の学級会30年ROMれ」と返すほかないのだった。詳しくは拙著『ハジの多い人生』などお読みください。
5時間以上の立ちっぱなし肉体労働はさすがに身に堪えたらしく、寝て起きたら腰の右側を痛めていた。マッサージガンと温灸でしのぐ。頂戴した差し入れをおやつにつまみながら、在庫を数え直してさまざま納入準備。本日19時までに二種類の説明書きを入稿したかった……のだけれど、さすがに力尽き、写真を選んで組んでが必要なカラー入稿は諦め、スミ一色のほうだけ入れる。これ以上のことは当面コンビニプリントでしのごう。
2025-11-25
午前中、リネンコ日誌を配信。たまたま立ち寄ったコンビニで「嵌めたままスマホ操作できる軍手」を見つけて、試してみてから即買った。これだよこれ。イベント準備中にいくら探してもどこにも売っていなかった品が、終わってからこんな近所の毎日来るような店で見つかるとは、灯台下暗し。
当日会場から着払いで送った搬出荷物が届く。ヤマト運輸の配達員さんと対峙しながらも思わず「わー、高ッか……!」と心の声が漏れてしまい、他意が無い旨を謝った。コロナ禍以降、日本国内でも配送料が高騰していること、それはむしろ従来の値段が安すぎたくらいであること、頭では理解していたものの、覚悟していた金額の倍近い。ちょうどイベント後の収支計算をしていた最中で、真っ先に「これでまた数千円の赤字が嵩む」と考えた。在庫と戦利品とブース什器、だいたい1.5箱くらいの量を送ったのだが、せめて0.5箱のほうは自分でスーツケースに詰め込んで持ち帰ればよかったな。次から絶対そうする。
夕方からはGANGA ZUMBAの結成19周年を記念した9年ぶりの復活ライブ。東京2公演を2回とも観て、合気道稽古5回分か文学フリマ出店10回分くらいのカロリーを消費しながら踊り狂って全身バキバキの筋肉痛に至った。ずっと「鏡の中にいるのが敵さ/それは自分さ」(Discotique)を信条に生きてきたので、お披露目ライブ行った26歳当時の「自分」と同じ高さで飛べる45歳でありたいなと思って……。そして『紙日記』をお読みの方にだけ伝わる話ですが、「九月五日(金)」の項目に書いた例のミッションも無事に完遂しました。いきなりのゼロ距離ハグ。「おまえだけが抱ければいい」(Wonderful World)とはまさにこのこと。人生は何が起こるかわかりませんね。
2025-11-28
26日水曜に合気道稽古で着地に失敗して左肩を痛める。鎖骨でも折ったかなと心配になるほどの激痛。そして肩を庇って転がったせいなのか、左脚のふくらはぎも肉離れみたいに攣って、立って歩くのがしんどい痛さ。27日木曜は外出の用事のちまた稽古に行くも、身体に痛い部位があるだけで気が削がれて終始ぼんやりしてしまう。28日金曜は新宿のユトリロ展と上野の運慶展をハシゴして(※私の元祖「推し」の一つは国宝無著像です)、空いた時間で、ようやく鍼灸接骨院へ。結論から言うとホネツギと鍼が大変よく効き、痛めているのは棘上筋だが、すべて日曜に負荷をかけた右腰から繋がっていると説明を受ける。文学フリマからずっと蓄積していた疲労を一週間がかりでようやく落とすことができた。これが中年の自費出版のリアルか……まぁ半分近くはGANGA ZUMBAで暴れたせいだと思うけど……土曜日の大阪公演も行きたかったぜ。
2025-11-30
下北沢「本屋B&B」へ『そのかねを』『紙日記』の納品に行く。送品送料は当方負担なので直納したほうが早くて安上がり。この日はBONUS TRACKで「第七回 日記祭」という即売会イベントが開催されていたので、その視察も兼ねる。
「B&B」は2012年創業で奇しくも私の文筆家デビューと近く、開店当初から出版記念トークイベントなどで長年大変お世話になっている。2020年にBONUS TRACKの現店舗へ移ってからはとくに売場に占める同人誌・リトルプレス・ZINEの割合が増えていて、ご近所の日記専門店「日記屋 月日」ともども、ここでしかない本との出会いがある。
袋詰め作業をしながら思い出していたのだが、前回の日本一時帰国中、2024年12月に「B&B」「月日」「fuzkue下北沢」をハシゴする機会があった。そもそもは「440」で高橋徹也のライブがある日で、世田谷代田ph7+でごっつい革のブーツを買い、本多劇場はせがわでずっしりした正絹のリユース着物を買い、BONUS TRACK各店で本もいっぱい買って、夕刻ライブハウスに辿り着くまでにやたら大荷物になっていた日だ。下北沢あるある。
今思えば、「そうだなぁ、来年は商業刊行物の予定もないし、私もまた自費出版でもしようかな、昔の原稿か日記から始めて、こういうところに、こんな感じで、一緒に置かせてもらってさーぁ?」と最初に思い立ったのは、あの日だった。ちょうど一年経ち、その日作ろうと思い描いた本が刷り上がって、その日思い描いたお店からお声がけいただいて、その日と同じ小田急線に乗って売りに行く。なんとも感慨深い。
そして、その同じ日に「月日」で買って「フヅクエ」で酒飲みながら読んでいた日記本のうち一つ、『蟹ブ店番日記』の著者であるphaさんが登壇する、滝口悠生 × 富田ララフネ × pha「日々の書き方——日記と小説の間」を観覧した。大変よいトークイベントで、さまざまメモを取る。『Θの散歩』で商業デビューしたての富田ララフネさんは今まさにプロの書き手とアマの書き手の境界線にいて、創作とノンフィクションのあわいにある作風についても率直に語っていた。仲良し三人組なのかと思ったら実質初顔合わせに近いと聞いて驚く。
よしよし私も書くぞう読むぞう、と意気込んで日記祭を巡り、最初の植本一子さんのブースで「これください!」と元気に財布を開いたら、なんと現金が一銭も入っていない。出店参加には数万円分の釣り銭を用意して臨んだのに、一般参加になった途端コレである。「すみません、私、諸事情により今から5分以内に同じ建物内で現金収入が得られる怪しい者でございますので、ちょっと取り置きしといてください!」と叫んでB&Bの階段を駆け上がり、ついさっき納めた買切分の代金をすぐ茶封筒で受け取って戻り、以後はその茶封筒から心置きなくばんばん日記本を買う。売上とは……? 結局、自分が納めた冊数と同じくらい他人様の本を買ってしまった。
『季刊日記 創刊号』は完売で、発売前重版が決まったそう。まこと、世は大日記時代であるよ。phaさんから「岡田さんもコッチ来るんですか?」と訊かれ、それがどっちかもわからぬまま、「そうですね、俺たちインターネット育ち、物理的に離れて暮らしていても繋がる方法はいくらでもあるんじゃないかと信じて、仲間になりたそうにソッチを見ています」と答えて、手作りのエッセイと日記の本を渡した。




